2011/04/21

IPアドレス枯渇問題の裏側


IPアドレスは非営利組織がインターネット上のユーザ全員で公平に共有する資源として管理されています。

管理の元締めは IANA ( Internet Assigned Numbers Authority) という団体です。直訳をすると「インターネットの番号割り当て当局」でしょうか、まんまですね。
IPアドレスは IANA から 「/8」(約1677万個)という単位で世界の5つの地域に割り当てられます。

さて IANA はIPアドレスの残量が /8 で残り5個まで進むと、世界の5つの地域に1個ずつ /8 を均等に割り当て、それでおしまい、という対応をとることが事前に会議で決まっており、それはもう実行済みです。
つまり、IPアドレスの元締めである IANA の在庫はもうなくなっています。


次に、その最後
/8分のIPアドレスはどうなったんだと言う話ですが、/8を1個ずつ割り当てられた5つの地域( アジアパシフィック、ヨーロッパ、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ )にはそれぞれの地域に管理団体(RIRと呼ぶ) が存在し、そこが自分の地域の各国にIPアドレスを在庫から配ることになります。
日本はアジア・パシフィック地域ということで APNIC というRIRに所属しています。

地図で見ると以下のような感じになっています。




実は5つの地域の中でも日本の所属する APNIC は一番最初に枯渇することが事前に解っていました。
なぜなら日本と同じくAPNICの傘下にいる中国の成長が著しく、IPアドレスの需要も多く、ここ最近で一番消費しているからです。APNIC は非営利団体なので必要性に応じた申請があればどんどん配っていきます。公平に。

そうこうしているうちについにAPNIC の在庫も2011年4月15日に枯渇してしまいました。

またAPNIC の下には各国が管理団体を置いており、日本では JPNIC という管理団体があります。JPNIC は APNIC と在庫を共有しており、APNICが在庫切れとなれば一緒にJPNICも在庫切れです。
つまり日本でも
2011年4月15日に非営利団体が管理しているIPアドレスは枯渇済みです。

追記:
上で触れた最後の配られた /8 については、まだ在庫として残ってはいます。ただし、通常とは違う方法/基準での割り振りとなっています。
『APNIC地域における最後の/8在庫からのIPv4アドレスの分配に関する(略)ご案内』
http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2011/20110329-01.html

ところでJPNICのIPアドレスが枯渇して割り当てが受けれなくなるのは、商用ISP(プロバイダ)や自社でIPアドレスを取得し大規模なサービスやシステムを運営しているような企業だけです。
私達一般ユーザや一般の企業は、
商用ISP(プロバイダ)などから間接的にIPアドレスを割り当ててもらっているのが通常です。ですのでプロバイダ内の在庫がある限りはそこから割り当てが受けれます。

どういうことかを図で示すと、上から3段階目の黄色い部分(LIR)まではもうIPアドレスが枯渇しており、
4段目のISPの備蓄のみ、ということになります。(5段目は我々エンドユーザです。)



こんな状況なので商用ISPではIPアドレスの申請が非常に厳しくなっています。(もう在庫のみだから)
これはWeb系な仕事の人もそこそこ影響は出ます。
例えばとある顧客で新サイトを立ち上げようと準備を進めても、今まではプロバイダの営業に言えば、
ぽろっと1C
(=/24 =256個)のIPアドレスとかを簡単に割り当てて貰えました。が、これからは「なぜ必要か」
「どのくらいのペースでIPアドレス利用量が増えているのか」「増加分から考えて今回の申請は適正か」
など書類の提出を求められてきます。(まあ1Cならもうちょっと緩いかな・・・・)

あからさまな駆け込み申請も増えてきています。
例を挙げると、数百アドレスしか使っていない某官公庁が数千アドレスの割り当て申請を出してきた、等。
当然却下・・・・



「じゃあどうすればいいのか」という話になりますが、そこはインフラ屋が解決する話であって、
仕事を離れた一般ユーザたる我々は何も心配することはありません。
「増えるのが枯渇」するだけで、「今あるものにはほぼ影響は無い」からです。
空き地が無くて、これ以上鉄道が引けなくったって、既に作った鉄道は今までどおり使えます。

というわけで、実はIPアドレス枯渇で困るのはネット上でサービスを提供するような「インターネットの裏側にいる人達だけです。

一般ユーザのとるべき態度としては、色々対策を考えているIT業界とやらの慌てっぷりを生暖かく見守りつつ、
枯渇をネタにサービス品質を下げてくるような業者には文句を言う、くらいの気持ちが準備出来ていればOKです。


1 件のコメント:

  1. なるほど、わかりやすいね。
    いい記事をありがとうございます

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